就活市場では人気のあるインフラ系企業。「安定している」「つぶれない」を求めて受験するのであろう。間違いなく求めるものはある。
だからこそ「面白い仕事をしたい」とか「自分らしさを仕事で表現したい」とか、高望みはしないほうがいい。「終身雇用」から外れようとすると痛い目を見る。それがインフラ。インフラ企業から転職しようとした30歳の中途採用候補者(以下候補者)との面接を実録で披露しよう。
面接内容
面接官「本日はどうぞよろしくお願いします」
候補者「よろしくお願いします
面接官「では履歴書もいただいていますが、簡単に、略歴お教えいただけますか」
候補者「はい。●●大学(早慶上智クラス)を卒業し、新卒で▲▲というインフラ会社に入りました。当初の4年間は企業の営業をしており、20社程度を担当しておりました。その後本社の大企業担当部署に参りまして、グローバルメーカーを3年担当していました。」
面接官「ありがとうございます。順に進めていきたいと思います。まず、●●大学卒業なんですね。体育会ですか」
候補者「はい、部活で主将を務めており、全国大会でも活躍しました」
面接官「素晴らしいご経歴ですね。なぜインフラの会社に?」
候補者「当時、東日本大震災が起きたばかりの時期でして、自分なりにどう世の中の役に立つか、を考えた時に、ライフラインのような、なくてはならない存在を支えていきたいと思ったからです。部活で主将として、その部になくてはならない人材、ということを意識していました。それを会社単位で実践しようと思ったんです。」
面接官「なるほど。昔から頼られる、存在感を示すことを考えていたんですね」
候補者「はい。弟と妹がいまして、小さい頃からこの2人のために何ができるか、兄を頼ってもらうことが私の存在意義でした。少しガキ大将的なところもあったかと思いますが、おかげで友人も多く、今でも親友と呼べる人が多くいるのは私の誇りです」
面接官「素晴らしいですね。実際今働かれている会社はいかがですか?候補者さんを慕っている方も多そうですが、なぜご転職を考えられたのですか?」
候補者「確かに、部署では重宝いただいており、周りの環境に対する不満はありません。ただ、仕事が定型業務というか、自分らしさを出せるものがなく、より自分で考え行動できるような仕事をしたいと思ったんです。」
面接官「具体的にどのような仕事をされているのですか?」
候補者「電力系の会社なのですが、当初4年間は企業で大口の電力消費企業様に、どのように電力を最適化するか、の提案業務を行っておりました」
面接官「もう少し、具体的に何をしていたのかお聞きしてもいいですか?」
候補者「はい、具体的には大口の電力消費をする企業、工場を持っていたんですが、ここからの値下げの圧力が厳しかったんです。そこで値下げをするのではなく、工場全体の電力消費量を抑えるための提案を行いました。工場の稼働時間であったり、こまめに不要な電源は落とす、というような、基本的なところです」
面接官「なるほど。ストレス多そうな職場ですね」
候補者「まぁそうなんですけど、電力会社というのは工場からすると選択できる会社がほぼ限られているので、圧力が厳しいと言っても愚痴程度なんですけどね。愚痴に付き合いながら、一緒に『社員教育頑張りましょう』と、相手に寄り添ってあげることが大切だったと思います。」
面接官「なるほど。その次はグローバルメーカーの担当ですか」
候補者「はい。社内でも人気のある部署です。グローバルメーカーの工場は本当に電力消費量が多いので、単価設定がとても大切になります。また、原子力発電がストップしてからは値上げ交渉等も続いていたので、顧客に対し粘り強く向き合うことで電力の値上げ交渉を成功させてきました。売り上げとしては5,000万近くアップできたと思います。」
面接官「すごいですね。交渉を成功に導くことができた一番の要因はどんなものですか」
候補者「工場の購買の方とのリレーションです。様々な提案を実施しながら当社の役員との接待などをアレンジをしたり、今まで以上に深い付き合いするよう心がけました。」
面接官「今までの仕事で、自分が一番クリエイティブだったものはどんなものでしょうか」
候補者「うーん、やはり工場の購買の方とのリレーションを詰めるために、相手の好きなものを把握し、そこで接待を行った時ですかね?相手が何の食べ物が好きなのか、を雑談からしっかりと探り当てることで、今までにない接待ができました」
と、インフラの方との中途採用の面談はこんな感じのものになる。
もちろん、みんながみんなこのような仕事をしているわけではないのだが、正直筆者が「面白そう!」と思える話は一つもなかった。
なかなかこのような人を世に排出するのはインフラ系の企業では難しいようだ。
「安定性」「つぶれない」を求めるのはもちろんいいこと。
ただ、「仕事にワクワクしながら生きる」というような、失うものもあることを忘れてはならない。