東京大学、京都大学という日本を代表する大学からの総合商社人気が落ちている、と様々なところで言われるようになりました。今人気なのは外コン。
外コンは人気ある、というのはわかりますが、それでも商社に頑張ってほしい。日本の人事のホンネを書きました。
就職情報のワンキャリアによると、学生からの人気No1に君臨し続けた三菱商事は1位から陥落。
現在の東大生の人気トップ3は
マッキンゼー&カンパニー
ボストンコンサルティンググループ
ゴールドマンサックス証券
と、外コン、外銀に席巻されています。
メガバンクで採用やってる時は総合商社なんて本当に目の上のたんこぶだと思ってましたw
内定出した学生が総合商社でも内定を取ると7割くらい持っていかれます。あ、実は3割くらいはちゃんと銀行選んでくれるんですよw
でも、いざ総合商社の人気が落ちた、となると、漠然とした不安が襲ってくるようになりました。
その不安の正体は何だろうと、改めて考えてみました。
1 「日本代表が負けた」のと同じ感覚
2 「ライバル」には強くい続けてほしい
3 キャリアファーストな考え方のメリット・デメリット
「日本代表が負けた」のと同じ感覚
サッカーにしろバレーボールにしろ、「日本代表」を応援する気持ちは誰にでもありますよね。
みんなが一丸となって応援できる、素晴らしい機会です。
総合商社はまさに「日本代表」として日本を牽引してきた存在です。
ご存知かもしれませんが、総合商社の歴史は実はそんなに古くありません。明治以降、富国強兵を推し進める日本にあって、海外からの資源の確保が必要不可欠でした。その調達を担っていたのが総合商社の人たちです。ここ100〜150年の日本の資源政策を現場で支えてくれている人たち、というのがこの総合商社の人たちですね。
今では世界中色んなところに行けるようになりましたが、当時は外国に行くこと自体が非常にチャレンジングなことであり、フロンティア精神を持って市場を開拓するのが商社マンのDNAなわけです。
そして、資源を獲得するには外貨が必要だったので、日本のものを海外へ輸出する、という機能も持ち合わせるようになりました。
こうして、海外との貿易に総合商社が必要不可欠になったわけです。
日本の産業の成長を世界中を飛び回りながら根底から支えてきた、と言っても過言ではありません。
だからこそ、日本人は商社マンに憧れを抱き、尊敬し、応援するという流れがあったと思います。
しかし、それが外コンに負けてしまうとなると、日本を代表して世界で戦ってた人々はやはり尊敬できるポジションにい続けて欲しい、そんな風に思ってしまうわけです。
「ライバル」には強くい続けてほしい
次は「ライバル」としての総合商社です。
メガバンクの採用をやっていると三菱商事、三井物産、住友商事はなかなか勝てない、伊藤忠、丸紅あたりはいい勝負する、みたいな状態でした。
実はこれはメガバンクに限ったことでなく、サントリーやJR東海など、他業界で人気のある企業とも同じような話をしてました。
そう、業界関係なしに、みんながvs総合商社でいかに学生を採るか、を考えていたんです。総合商社の勝ち方をみんなで議論したり、傷を舐めあったりw
総合商社が強いからこそ、それを追いかける僕たちはあの手この手を考えて共有して、というPDCAを回すことができました。
もちろん今でも総合商社 > メガバンクという構図は変わらないのですが、それでもやはりライバルは強いに越したことはありません。
皆さんも、例えば部活をやっていて県大会出場を目指している、そのためには強いライバルがいて、そいつに勝たないと先に進めない。
そんな時の方が燃えませんかw?どうやったら勝てるだろう、というのを真剣に考えるのです。
だからこそ、総合商社にはいつまでも見上げるべき存在でいてほしいし、それがトップに君臨していてほしいわけです。
キャリアファーストな考え方のメリット・デメリット
最後は、優秀な人たちのキャリアへの考え方が若干偏っていること、です。
これは、最近国家公務員の優秀な人材がどんどん辞めていることにも共通して言えることです。
マッキンゼーやボスコン出身の人間と一緒に仕事をしてきました。確かに彼らは極めて優秀で、人格としても素晴らしくて、どこでも通用していける人材なのは間違いありません。
最近の学生は「どこでも通用する人材になる」という意識が強すぎるような気もします。現時点でやりたいことは見つからない、なので将来やりたいことが見つかった時に、何でもできるように力をつけておこう。
これ自体は僕は全く異論はありません。
しかし、これらの人たちがその後に活躍できるフィールドがどこになるか、と考えると、逆に学生さんが思うほどキャリアが広がっているわけではない、というのが日本企業の実情だと思います。
それだけ鍛えられた人材をマネジメントできる人が日本の企業にいなければ、採用したところで危険なので、採用しない、となるわけです。
某、日本を代表する自動車メーカーの人事の偉い人が言っていました。
「うちには一流の人材はいらない。超二流がほしい。うちはチームワークで仕事をするから、あまり突出した人材にいてしまうと、その人に頼ってしまう。誰かに仕事を頼りだすと、不公正感が生まれてしまう。全員がチームワーク良く、全員が全力を出し切る。そんなチームを目指すんです」
ここにはなかなかマッキンゼーやボスコンの人が入り込む余地がないんですよね。
なので、マッキンゼー、ボスコン出身者とはいえ日本の大企業でキャリアを積む道はほぼなく、結局外資系の企業に勤めるか、ベンチャーで経営者を強力にサポートするポジションになるか、ある程度選択肢は絞られてしまうのです。
(三井物産だけは積極的にこの辺りの人材採用してますが)
一方で、総合商社は「この道のプロ」という、専門性を持つ人たちです。マッキンゼーやボスコンの人たちはジェネラリストのトップに君臨する人たちとすれば、総合商社はスペシャリストとジェネラリストのハイブリッドな人たちなわけです。
どこに配属されるかはわからないですけども、特定の分野のスペシャリストとなり、業界のモノの動き、カネの動き、時代の動きを捉え次の手を打つ、ということができるようになります。
確かに総合商社も手を広げすぎていて、何をやっているか正直よくわからないところもあります。ある程度高い成長が期待できる分野にもう少し集中する、というのは確かに考えたほうがいいかもしれません。
ただ、個別企業で見てきたように三菱商事、伊藤忠、住友商事なんかはどの部門に行っても一定の収益性を担保しており、ビジネスを回していくノウハウが蓄積されているのは間違いありません。
「置かれた場所で咲け」
という考え方はもはや昭和の考え方であり、平成が終わるこの時代になんのこっちゃと思うかもしれません。
ただ、総合商社のような会社だからこそ、自分では思いもよらないような新しい世界観を広げてくれるのも事実です。
「自己実現」というはまさに自分で思い描いた人生を描くことではあるのですが、それだけでは自分で見える範囲でしか仕事はできなくなります。
より自分の可能性を広げるためにも日本の優秀な学生の一定程度は、こんな考え方で総合商社を選んでくれてもいいんじゃないかと思ったりするわけです。
日本にゼネラリスト人材ばかりが溢れるようになってしまったところで、この国のカタチはどうなるんだろうと思います。
また、結局優秀な人材を外資に取られ続けることで、日本の優れた企業の経営力が落ちてしまうことにならないだろうかと心配になります。
なので、優秀な学生の皆さん、是非総合商社を目指しましょう!
以上、ざっくりと、総合商社が1番でいてほしい理由を書いてきました。
「日本人として」みたいなアイデンティティが根底にはあるんだと思いますが、是非日本の代表企業として、外資に負けずに頑張ってほしいです。